フットサル戦術解説、今回はコントロールオリエンタードを解説します。
✓筆者プロフィール
ヴェルディフットサルユース、チェルシーサッカースクールなどでの指導経験と、サッカーでは習志野高校(全国ベスト8)、フットサルでは関東リーグ2部などでの競技経験を基に、サッカー、フットサル戦術やトレーニングなどを紹介
コントロールオリエンタードとは
コントロールオリエンタードという名前(用語)を知っている方は少ないかもしれません。
シンプルに言えば「ボールを動かしてコントロールする」ことです。
まずは動画でイメージを持ってもらいたいと思います。
※音量が大きいのでご注意ください
動画の通り、スペースを認知してコントロールの方向を決めることです。
他記事で解説した、ジャグナウ、パラレラ、ブロックなど、戦術を使う場面でプレッシャーを受け、
戦術の再現が出来ない(難しい)時、チームメイトや監督から”ボールを動かせ!”といった指示がでることがあります。
ただ、細かく(具体的に)伝えられる監督や選手は残念ながら少ない印象です。
その理由も合わせて解説していきます。
あまり体系立てるとプレーの幅を縮める可能性もありますが、基礎的な部分として見てください。
ボールを動かす
コントロールオリエンタードはボールを動かすことで、スペースを使いながらプレーしていくと有意義に状況を変えられるものです。
ここがポイントですが、当たり前のように出来る選手は無意識に(感覚で)出来ているため、味方に上手く伝えることが出来ない選手が多いです。
なぜなら無意識に出来る人は他のプレーや周りの情報を処理しているので、そもそもボールを動かすということ自体を考えるまで至らないためです。
また監督の場合は、チーム全体を見ながら、全体の戦術→個人の部分へ考えなくてはいけないので、伝えることが出来ないケースが多いです。
私の場合は自身にいわゆるセンスがなかったので、どうしたら出来るかトライ&エラーをしながら、一歩ずつ処理をして、最終的に無意識レベルに落とし込んでいきました。
ではまず先ほど述べた、プレッシャーを受けている場面でのコントロールの話をします。
なぜボールを動かすかということについて、時間と距離、角度、脅威で解説します。
時間を作る
例えばボールを受ける前にフェイクをして、うまく相手との距離が取れた時、基本的にはトラップから1〜2秒はボールを取られない時間を作れます。
相手もフェイクに引っ掛かったことで一度後ろに下がるので、心理的に後手のディフェンスとなり、オフェンスに向かって進みにくいです。
とはいえ、フェイクで作る時間も限りがあるので、フェイクで作った1〜2秒をさらに伸ばすために、
ボールを相手から遠ざけることが出来ると、それだけで周りの選手を活かせるだけのリセットの時間を作ることができます。
うまくいけば相手のプレスが一旦かからなくなることもできるかもしれないです。
例えばフェイクができなかったとしても、トラップを足元に止めれば、ディフェンスはまっすぐボールに向かうので最短時間で取られてしまいます。
自分の力でディフェンスをかわすだけではなく、自陣方向に逃げるコントロールができれば、プレッシャーを逃しながら周りに時間を作ってあげることができます。
これが的確に判断できる選手は周りに安心感を与えることができます。
距離を作る
“時間を作る”と似ていますが、プレッシャーを受けている場面で足元にボールを止めると、やはり相手ディフェンスとの距離がないため、パスやドリブルの選択肢が消えてしまうことがあります。
パスを出しづらい上に、相手ディフェンスの足が届く距離にボールを晒してしまうかもしれませんが、ボールを動かすことでディフェンスとの距離感も変わり(広がり)、ディフェンスが足を出しにくくなります。
ただし、相手ディフェンスとの距離を離そうとするのにコントロールを失うほどのスピードを出してボールを動かさなくても十分です。
まずはボール動かす事で相手ディフェンスが取りにきても、簡単に距離が狭くならない様にすれば、時間が確保できてきます。
角度をつける
これまでの解説の通り、ボールを動かせば自然と時間、距離は作る事ができます。
最後に大切なのが角度です。
プレッシャーをかかっている時ほど外から中へコントロールを意識してください。
ディフェンスは中から外に追い出す事がセオリーですので、中にドリブルをされるとプレスのセオリーの逆を突くことになります。
プレッシャーがかかっている中で2メートル以内にトラップをする場合、やや斜め後ろの中央方向にコントロールをすると、相手プレスの方向と離れ、ボールが取りづらくなります。
下記画像は味方4番がパスを受けたあとの設定で、1枚目がゴールに向かって真後ろにコントロールした場合、2枚目が角度をつけてコントロールした場合のイメージです。
わかりやすく極端にしていますが、黄色の矢印(相手5番とボールの距離)の長さが変わります。
動かす角度によって相手の足が届かない(出しづらい)角度を、トライ&エラーで覚えてみてください。
コントロールオリエンタードで状況を変える(脅威)
今まではプレッシャーを受けている時のコントロールの話をしましたが、コントロールオリエンタードが特に大事なのはサイドの場面です。
今度は攻撃スピードを重視したコントロールを紹介します。
下記の様に黄色5番が矢印の方向へ動き出して中央のスペースが空きます。
そのスペースに向かってサイドから中央へコントロールをすることで、ピヴォのポジションの黄色2番にパスを出すことができます。
黄色4番がトラップでボールを足元に止めた場合は、ピヴォにボールを出せる角度がありませんが、ボールを中央方向へ動かす(角度を作る)ことでボールを前(ピヴォ)に収めるパスコースが作れます。
サイドでボールを受けるとき(脅威2)
下の画像の様にサイドの前方スペースが空いている時、足元で止めてしまうシーンが多いです。
特に足の裏でトラップをするフットサル特有の癖がつくと、常に触れる位置にボールを止める=足裏のコントロールにとらわれ、スペースの認知ができているのに、そのスペースへ運ばずに止めてしまいがちです。
この場合はスペースにインサイドでも足裏でも良いので運ぶことをしてみてください。
ゴールに接近するためのプレーが出来ればそれだけ相手にとっては脅威になります。
育成年代で見られるシーン
この足元で止めるプレーは小学生のサッカーでもよく起こります。全て足元で止めてからドリブルで相手を抜くことが多くなりがちです。
最近はドリブルに特化したスクールやクラブも多くなりましたが、これではテクニックがあっても判断ミスと取られてしまいます。
テクニックがついて自信がつく事はとても大事ですし、相手を抜けることが楽しい時も子供達にはもちろんあります。
そのあとの判断の部分をいかに教えられるかが指導者としては大事です。
ドリブルが上手ければ良かったというのはもう過去のものになっています。
スペースもコントロールで使えるし、ドリブルもパスもできるというのが本来のテクニックになるかと思います。
まとめ
今回は基本的なボールコントロールを体系立てて話してみました。
当たり前に感覚としてできているプレーヤーもいれば、逆に闇雲にゴールに向かってディフェンスとの距離を失うこともあります。
大事なのはゴールに最短でどうプレー出来るかになります。
ドリブルなのかパスなのか、対面パス一つでもディフェエンスがどちらから来ているかイメージをすることで、どの方向へのコントロールをする必要があるか決まってきます。
是非チャレンジしてみてください。