エンブレムからロゴへ、ユベントスのリブランディング

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イタリアの常勝軍団ユベントスには、クリスティアーノ・ロナウド、パウロ・ディバラ、ミラレム・ピアニッチといった各国を代表する面々がそろう。彼らを獲得し契約を結ぶためには莫大な資金が必要で、その金額はインフレしつつある。

社会の急速な変化にあわせて、ユベントスのクラブ運営も大きく舵を切り始めた。テーマは”リブランディング”。クラブのこれからを見据えた、ブランドの再構築だ。

エンブレムからロゴへ、求めたのはシンプル


2017年1月、ユベントスはこの夏の新シーズンから”エンブレム”ではなく、”ロゴ”を用いることを発表した。白と黒の縦縞そして牛(過去には馬も)の入った伝統を捨て去り、クラブ名の頭文字であるJを強調したデザインを採用した。

当然サポーターからは批判があがる。「格好悪い」、「一晩で作ったのか」といった苦言から、新ロゴを揶揄したコラージュも出回った。
それでもクラブの首脳陣には、グッズ収益を増やすというマーケティング上のねらいがあった。

エンブレムとロゴの違いを一口でいえば「シンプルかどうか」だろう。複雑なデザインを盛り込みがちなエンブレムは、格式高さと同時に近寄りがたい印象を与える。だが、ロゴは違う。複雑怪奇な文様や、そのいわれを知らない人からすれば「なぜ牛?(笑)」とも笑われかねない目立つイラストもない。

いつでもそこにあるロゴ、愛し愛される存在へ


近年のサッカーグッズのラインナップはとても豊富だ。昔からあるレプリカユニフォームやフラッグのほかにも、スマートフォンケースや洋服、赤ちゃんのよだれかけに至るまで、年齢・性別・場面を問わず使えるものが多い。

これらのグッズはどこのクラブが作っているのか、グッズを使う人がどこのクラブを支持しているのかを示す”しるし”をつける必要がある。しかもただつければ良いわけではなく、誰にとっても親しみやすく使いやすい必要があった。この条件をクリアするのがロゴだ。

また、近年では私たちが用いるデバイスやメディアが多様化したことで、こうしたしるしが目につく機会も増えてきた。大画面では詳細をとらえられるエンブレムも、画面の小さなスマートフォンではかなり見にくい。しかし、ロゴであればどこのクラブの話題なのか一発でわかるだろう。

「スマホのニュースでみたサッカー選手が、とてもイケメンで気になった。プレーもなかなか上手いらしい。ふと目をやると、胸に大きなJのロゴが入ったユニフォームを着ていた。調べてみるとユベントスというクラブにいるらしい」

特定のクラブを応援し始める理由は意外とこんなものだ。特に地縁のない海外のクラブに注目する場合はなおさらだろう。エンブレムからロゴへの変更は、目に見えてわかる収益の増加だけでなく、未来のサポーター獲得の機会も創出している。

ユベントスは2019-20シーズンのホームユニフォームでも、伝統の縦縞デザインを不採用に。「#BETHESTRIPES」と題をうち、その革新性と挑戦への意欲を示している。

Image by Juventus FC




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