フットサル 戦術解説/オフェンス編(8−1)<クワトロ 概念編>

フットサルの戦術解説、この記事ではクワトロの概念編を解説していきます。

特に本格的にフットサルを始めた選手・チーム(代表者)の方は、ぜひご参考ください。

✓筆者プロフィール

ヴェルディフットサルユース、チェルシーサッカースクールなどでの指導経験と、サッカーでは習志野高校(全国ベスト8)、フットサルでは関東リーグ2部などでの競技経験を基に、サッカー、フットサル戦術やトレーニングなどを紹介


クワトロ(4-0)とは?

今回はクワトロ(4-0)という、フィールドプレーヤー4人で行う戦術をフットサル初心者から競技者まで参考にしていただけるよう解説していきます。

 

戦術というよりもサッカーでいうフォーメーションのような考え方で、フィールドプレーヤーがどのようにゴールへ侵入していくかを統一させる考え方です。

 

クワトロという言葉は、身近なところでは4種類を1つの生地にまとめたピザの名称でもよく見かけますが、スペイン語で数字の“4”を意味します。

チームの戦術がクワトロだという競技者も多いのではないでしょうか。

ではなぜクワトロが魅力的なフットサル戦術なのか、解説していきます。

クワトロの狙いは?

まずクワトロを全く知らない方に動画で見てもらいます。

 

クワトロは4人が中盤で横並びや台形の様な形をベースとして、ポジショニングを流動的に取りながらドリブル、パスで“あるスペース”を作っています。

 

“あるスペース”とは“ディフェンスの裏のスペース”です。

 

クワトロの狙いの理想は、裏のスペースでフリーでボールを受けてシュートを打つ事です。

 

フリーでというのも難しいと思いますが、あくまで理想です。数的有利でシュートかファー詰めに合わせるかです。

 

フットサルの狭いスペースでは、ディフェンスとの距離が近くなり、1人のディフェンスをかわしても2秒もしないうちに別のディフェンダーがカバーリングできてしまうことがあります。

 

クワトロは、ディフェンスの鉄則のチャレンジアンドカバーを無効にするために、人とボールが動いてスペースを作ろうという戦術です。

ディフェンスは後ろのスペースを使われたくない

クワトロの例として下の図で説明します。※黄色が味方、赤が相手

 

クワトロの基本形の横並び、または台形の形を取った時、相手2番のポジションニングが味方2番にマンマークでついてしまうと後ろのスペースがあきます。

 

その後ろのスペースを埋めるため相手2番はタイトなマークにいきにくいです。

左サイドは味方4番、2番と相手4番の2対1の状況を作られてしまいディフェンスのプレッシャーがかからなくなります。

 

するとまた動き直され後ろのスペースまたはサイドで数的優位を作られてしまいます。

フットサル クワトロ解説

相手2番が気づかずにマークについていき後ろのスペースを空けた場合、下の図のようにワンツーなどのダイレクトプレーで一気にディフェンスを突破されてしまう事があります。

フットサル クワトロ解説

これはあくまで参考例です。

実際はボールも人も動きながらになるのでマークがずれたり入れ替わったりもします。

 

 

前がかりになる事で4人突破されて最後はフリーでシュートを打たれています。

 

スピード感のあるトップレベルのクワトロはフリーでシュートまで到達する事が多く、カバーリングを取っていたポジションの選手が誰なのかわからなくなります。

 

そして、ピヴォというポジションを使った戦術と異なるのは、シューター全員がゴールに向いている状況を作れている事です。

関連記事:フットサル/ポジション別適正(1)|<ピヴォ>ってどういう選手?

 

ゴールを決めるにはできるだけ前を向いて(良い状況で)シュートを打つことが理想です。

ゴールに背中をむけてパスを受け、反転してシュートまで持っていくパターンが増えるピヴォを置くシステムとは違いがあります。

※クワトロも流れによってはピヴォ当て、ポストプレーのようなポジショニングをとることはあります。

サッカーの戦術0トップと似てる?

クワトロの攻撃の意図は下記の動画を見てもらえればイメージがつきやすいと思います。

バルセロナや、2010年W杯で優勝したスペイン代表が採用したことでも有名な0トップ(偽9番)です。

 

簡単に説明するとサッカーにおいて得点するために最重要とされるポジションであるフォワードを置かない戦術です。

当時、グアルディオラ監督が考案した今までのサッカーの常識を覆す戦術です。

関連記事:サッカー フォーメーション|4-1-2-3の特徴とメリット・デメリット

 

フォワードは最前線でセンターバックとの駆け引きなどをしてボールを受け得点をするポジションです。

フォワードに得点をさせない役のセンターバックのマークがゼロトップでは誰もいなくなります。

緑色のエリアにマークするべき黄色の選手がいない状況で、赤色のエリアで数的優位を作れます。

センターバックは最終ラインを揃えてオフサイドラインを作るため、後ろのスペースを空けて(前にでて)フォワードのマークを捕まえにいくことは難しいです。

数的優位ができればフリーでミドルシュートを打つことやラストパスを出すことも可能になります。

クワトロの2つの狙い

クワトロの戦術の狙いは基本的には2つ。

ゴールに直結するピヴォを置かないことで

1.ディフェンスの後ろのスペース=ディフェンスのカバーリングをなくす

2.中盤は必ず数的優位を作る=後ろ1人カバーリングを残すのであれば中盤は数的優位

この2つの狙いを作るためにチームでそれぞれの動きを決めています。

大まかな基本的な動きはありますが、そちらは別の記事で解説していきます。

 

ちなみにFリーグではクワトロを戦術としているチームで、攻撃パターンが40通りほどあるチームもありました。

クワトロの崩し方は?

競技フットサルのトップレベルとなると、崩し方を40通りも覚えるなど、クワトロは複雑な動きを必要とする戦術で難しいのでは?となりそうですが、基本的な動きとしては2人の関係の戦術がベースです。

 

クワトロは4人の戦術ですが、局面の戦術を切り取ると、ワンツーやジャグナウ、パラレラ、ブロック、フェイク、アラコルタ、バ等、基本的な動きを繰り返し組み合わせることで出来ています。

 

後ろのスペースを確保するために4枚並び、2人の関係の戦術を繰り返して崩す。そう考えるのが一番シンプルだと思います。

それに付随してバックドアのパスなどで3人目の動きなどが活きてきたりもします。

だいぶ抽象的な説明になりますが、基本的な考え方としてはこれが原則となります。

関連記事:フットサルの動き方/ピヴォが相手背後でパスを受ける<バックドア>

 

チームによってクワトロも決まった動きがあります。

ですが逆にこの2人の関係性の戦術理解がないままで決まった動きをしていると、ボールを回しながらどこかで苦しくなる場面が現れます。

これはクワトロチームのあるあるです。

ここが基本になりボールを保持することができないとボールが縦に進まない戦術になってしまいます。

クワトロがうまくいかないチームは、一度基本的な2人の関係を見直す練習をするのも◯です。

まとめ

以上、今回はクワトロの基本的考え方=概念編となります。

クワトロは2人の関係などで崩していくものと解説しましたが、攻撃の厚みを出すためにシュートに対するファー詰めや、こぼれ球を拾うことなどは必要になります。

 

裏のスペースを狙いながら突破できると判断した瞬間、他の選手も連動してシュートに反応しにいきます。

クワトロで4人で回しながら相手の隙をついて突破、連動してシュートに絡みにいくのはとても楽しい瞬間です。

お互いの狙いが合わないことが多くなると思いますが、話しあって精度を高めていくのもチームとなっていく過程としては醍醐味でしょう。

クワトロ実践編もあわせてご参考ください。