サッカーでのフットサル戦術の有効性|マンチェスター・シティ プレー解説

こんにちは。リガーレの米谷です。

・リガーレヴィア葛飾(FリーグDiv2)No.14
・関東フットサルリーグ得点王、ベスト5受賞
・地域チャンピオンズリーグ得点王
・フットサルチーム監督、指導
・フットサルクリニック開催(不定期)
※プロフィールは記事投稿時点のもの

僕はフットサルを始めてから、サッカーに対する観え方も違っていきました。

 

「フットサルはサッカーに活かせる!」「フットサルをやるとサッカー上手くなる!」という話を聞きますし、僕自身もフットサルをプレーすることのサッカーに対する有効性は間違いなくあると考えています。

でも「フットサルをプレーすると実際にどういうことがサッカーで有効なの?」という具体例をあまり聞きません。

 

そこでこの記事ではマンチェスターシティのハイライト動画を使って、フットサル選手がサッカーを観たときに、

・なにがすごいと感じるのか

・サッカーの中で起きているフットサルと類似していることは何か

・フットサルのプレーとサッカーのプレーの類似点

これらを挙げて、フットサルがサッカーに活かせるということを解説していきます。

 

別記事では、川崎フロンターレの試合を観て驚愕したポイントをお伝えしましたが、マンチェスターシティも半端ないです!!!!

マンチェスターシティのハイライト動画プレー解説

この動画は21-22シーズンのプレミアリーグで行われた、マンチェスターシティ VS マンチェスターユナイテッドのハイライト動画です。

こちらをベースに解説していきます。作戦盤イラストの青がシティ、赤がユナイテッドです。

プレー解説① ライン間+フィニッシュトライアングル

1分50秒のシーンからライン間+フィニッシュトライアングルについて解説します。

9番(ブラジル代表 ジェズス)がゴール前に走り込むことで最終ラインが下がり、最終ラインと中盤のラインが伸びてライン間のスペースが大きくなりました。

ライン間のスペースへ17番(ベルギー代表 デブライネ)が走り込みシュート。

こぼれ球をゴール前に走り込んでいた9番ジェズスが拾いシュート。

フットサルで言うと、セカンドポストへの進入+リバウンドポジションへの進入で、フィニッシュトライアングルの構造です。

 

ポイントはサイドでボールを持っていた47番(イングランド代表 フォーデン)は、9番ジェズスにパスか17番デブライネにパスかシュートの選択肢が2つある点です。

9番ジェズスはパスが出ればゴール前で触るだけでした。同時にこぼれ球の対応もできるポジション(リバウンドポジション)になります。

 

17番デブライネは、フィニッシュトライアングルのセンターレーンにあたるので、3人目としてスペースに走り込むことで、前向きでプレーすることができ、強いシュートが打てる態勢でプレーができます。

また、仮にサイドからのボールがカットされても、センターレーンにいることで、いち早く守備に移行できるポジションにいます(守備バランス)。

 

走る距離、質(コース)、スピード、全てのレベルが高いですが、ゴール前の構築(フィニッシュワーク)として非常に参考になるシーンでした。

プレー解説② ライン間の使い方

2分35秒のシーンからライン間の使い方を解説します。

右サイドでボールを持った9番ジェズスが、ドリブルしながら守備者を固定します。

 

9番ジェズスがドリブルで守備者を固定している時間(守備者を固定している時間というのがポイント!)で、17番デブライネはライン間のスペースに留まり(歩く)、8番(ドイツ代表 ギュンドアン)は最終ラインの守備の選手の間(ライン上)に進入します。

 

9番ジェズスの選手の周囲では、

①9番ジェズスのドリブルに対しての対応(赤23番)

②9番ジェズスのドリブル突破に対してのカバーと同時に17番デブライネに対しての対応(赤5番)

③9番ジェズスからのクロスボールへの対応(赤2番)

と3人の守備者が引き付けられています。

 

また、8番ギュンドアンが最終ライン上に進入したことで、大外を管理していた赤3番が、インサイドの8番ギュンドアンを見ることになり、大外の20番(ポルトガル代表 シウバ)がフリーになっています。

慌てて赤29番が大外のマークのために下がったことで47番フォーデンの前に大きなスペースが空きました。

こうなると、守備者はどうして良いかわからないでしょう。笑

 

シティの選手が、その場所にいること(位置的優位とも捉えることができます)で、守備者に迷いを与えている好例と言えます。

守備の最終ライン4人が、ボールを持っている9番ジェズス(赤2番と5番)と8番ギュンドアン(赤3番)、20番シウバ(赤29番)に固定されているため、17番デブライネが狭いスペースでも容易にパスを受けて、前を向いてシュートを打つことが出来ました。

 

シティの特徴として、セカンドポストや最終ライン上に選手を置くことで、意図的に守備者を固定していること(ピン留め)がわかります。

 

さらに、セカンドポストとセンターレーンに人がいることで、こぼれ球は流れたボールにも反応しやすい配置になっています(リバウンドポジション)。

このシーンでも、17番デブライネが打ったシュートをキーパーが弾きますが、あわよくば20番シウバがこぼれ球を詰めることができたシーンでした(セカンドポスト)。

 

シュートを打った17番デブライネのボールの受け方は、以前にこちらの記事でも紹介しています。

ドリブルしている選手への関わり方が重要であることが分かるプレーです。

プレー解説③ ゴール前の各選手の動き直し(微調整)

3分すぎからの得点シーンより、ゴール前の各選手の動き直しの解説です。

 

 

まず、8番ギュンドアンが右サイドの20番シウバに出した後、縦のスペースに走ります。その時、9番ジェズスは最終ライン上に位置します。

もう一つポイントなのが、47番フォーデンが少し下がってパスコースに入ります。

これらによって、

番ギュンドアン(赤5番)・20番シウバ(赤23番)・9番ジェズス(赤2番)・47番フォーデン(赤39番)の選手に( )内の守備者が固定されました。(ピン留め)

 

さらにすごいのは、17番デブライネが空いているライン間のスペースにスルスル進入しています。

全て同じ時間の中で行われていることが驚異的です。選手個々人が状況に応じて動きなおしていることが分かります。

 

右サイドでボールを持っている選手が打開できなかったので、逆サイドのスペースに走ってきた27番(ポルトガル代表 カンセロ)に展開します。

この時、守備者の視野と身体の向きは右サイドから左サイドに変わりました。

 

左サイドにボールが入ると、最終ラインにいる選手(9番ジェズスと47番フォーデン)が、空いているスペースに走り、守備者を引き連れていくのが分かります。

 

そしてここで素晴らしいのが、左サイドにパスを出した20番シウバが、最終ラインの大外である視野外からセカンドポストへ走り込みます。

 

結果、左サイドからのクロスを20番シウバがセカンドポストで詰めてゴール(ファー詰め)。

ボールを持っていない選手の動き出しで守備者に迷いを与えながら、攻撃において有効なセカンドポストへ配給した好例です。

 

マンチェスターシティの特徴として、毎回最終ラインの大外に選手が配置されています。

おそらく意図的にやっていることだと思います。

 

ファー詰めのシーンでもう一つ注目なのが、シュートを打った選手のすぐ横にいた8番。

動きが重なっていた20番シウバが動き出したのを見ると、8番ギュンドアンは立ち止まり、リバウンドポジションで動きやすい態勢に整えていました。

 

こういった細かい所作があれば、もしファー詰めがキーパーにキャッチされるたり弾いたりした際に、いち早く対応できるように準備できます。

 

さらにフットサルの視点で言うと、20番シウバがセカンドポストで決めた時、47番フォーデンが真横にサポートに入っていました。

そして17番デブライネがセンターレーンにサポートに入っていたことで、フィニッシュトライングルが構築されていました。

もし、20番シウバがゴールを決めることが難しくても他の選択肢も生んでいたことになり、こういった行動が「厚みのある攻撃」を生み出していることが分かります。

フットサル選手が見たマンチェスターシティのすごいポイント

次に、フットサル選手から見たマンチェスターシティのすごいところは、実際にはどのようなところなのかをお伝えしていきます。

ポイント① マンチェスターシティのライン間の作り方・使い方

マンチェスターシティ(以下、シティ)の選手のライン間の作り方と使い方が異次元のレベルで上手いです。

別の記事でライン間についてお伝えしましたが、シティの選手を見るととても分かりやすくライン間を作り、使っていました。

 

シティの攻撃の特徴として、相手の最終ラインに複数人が進入して、ゴールに迫っていきます。

守備側としては、同一視野でマークを管理したい(ボールと自分のマークの両方を見るためには下がらないと見れません)ので、結果的に最終ラインが下がってしまいます。

最終ラインが下がると、中盤のラインとの間が広がり、ライン間のスペースが大きくなります。

 

シティの選手は、空いたライン間のスペースに必ずと言っていいほど進入していきます。

動画を観ていると、3人目の動きと言われるプレーが随所に出ているのが分かります。

 

進入する目的は様々で、

〇サポート

〇リバウンドポジション(こぼれ球)

〇守備バランス(ファーストディフェンダー)

など、ライン間に入ることで複数の目的を果たすことができます。

 

口で言うのは簡単ですが、大きなサッカーコートで絶え間なく複数の目的を遂行しているシティの選手の運動量は尋常ではないですし、走るコース、タイミングが素晴らしく、守備に対して脅威となっているのが分かります。

ポイント② マンチェスターシティのセカンドポスト(ファー詰め)

シティの特徴として、ゴールまではセカンドポストと言われる場所に選手がいます。

セカンドポストとは、サイドにボールがある場合、遠い側のポストのことを指します。

見方を変えると、最終ラインの選手で一番ボールから遠い選手よりも外側に選手がいるようにしています。

 

フットサルでも有効なセカンドポストですが、サッカーでも有効であることが分かります。

シティの選手がセカンドポストにいることで、最終ラインの外側の選手は、ボールと自分のマークを同一視野で管理すること(2項管理)が難しくなります。

 

2項管理は別記事で解説しています。

 

守備者が同一視野で管理することが難しくなると、

〇マーカーに引っ張られる

〇最終ラインが下がる

のどちらかになり、マーカーに引っ張られると、手前のライン上のスペースが広がることで攻略することが容易になり、最終ラインが下がるとポイント①でもお伝えしたように、よりライン間のスペースが大きくなります。

 

このように、セカンドポストにいるだけで、守備側に選択を迫っているのが分かります。

そして、そもそもセカンドポストへのボールの処理はとても難しく、キーパーとの連携も必要になるので、シティのハイライト動画を観ていると、セカンドポストへ蹴り込むだけでもとても有効なのが分かります。

 

サッカーはフットサルと違いオフサイドがありますが、コートサイズが大きい分、サイドからボールが出たあとセカンドポストまでに到達する時間最終ラインから最終ラインを越えてセカンドポストへ到達する時間となり、オフサイドにならないようにボールに間に合うことができます。

 

元々僕は「サッカーはオフサイドがあるからセカンドポストは難しいのではないか?」と思っていましたが、シティのサッカーを観て、オフサイドがあってもセカンドポストは有効だと気づきました。

まとめ サッカーとフットサルの親和性は高い!!

この記事では、マンチェスターシティの動画をベースにフットサルで重要なライン間でのプレーとセカンドポストの有効性をお伝えしました。

 

フットサルの方が、

〇人数が少ない

〇コートサイズが小さい

〇ボールが弾まない

という理由から、今回お伝えしたライン間やセカンドポストの有効性について分かりやすい点もあるのではないかと考えています。

 

また、最終ラインがどのように動くか?については、サッカーの方がよく分かるなーと感じました。

人数が多いことで、守備ラインが分かりやすく、攻撃側の動きによって、守備ラインがどのように動いているかが分かりやすいです。

 

このように、サッカーとフットサルの親和性は高く、相互に学べることは多いのではないかと考えています。

この記事が相互に学べることが分かる一つの参考になれば幸いです。

1つのハイライト動画から印象的なシーンをお伝えしましたが、今後も他のハイライト動画から解説していきます。

 

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